歯並びが悪いと、滑舌は悪くなるのでしょうか?と多くの方からご質問を頂きます。
歯並びが悪いから、滑舌が悪いのか・・・と考えそうですが、実は違います。
それでは、滑舌の専門家が、歯並びがどの程度、滑舌に関係するのか、具体的な例を元にご説明をさせて頂きます。
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歯並びはどの程度、滑舌を悪くするのか
歯並びはどの程度、滑舌を悪くするのかですが、発音する時には、舌、顎、歯、唇、と多くの場所を使います。
発音にとって一番重要なことは、「舌の位置、舌の動かし方」です。他の部分は、それに付随するもので、その一部が「歯並び」です。
確かに歯並びが悪いと、空気の漏れなど、「歯」をよく使う部分の発音では、音を明瞭に出すことが難しく感じることが多くあります。
例えば、「させて頂きます」「失礼いたします」等、「さ行」「ざ行」「た行」を含む言葉は特に発音がしづらい感じることが多く、はっきりと言えない感覚が残る場合がほとんどです。
しかしながら、上記の「言えないと感じる言葉」は、歯並びによって起きているのではなく、「舌の位置や舌の動かし方の間違い」によって起きている場合がほとんどです。
歯並びが滑舌を悪くしているのではなく、「舌の位置や発音の仕方」が滑舌を悪くしているのです。
それでは、具体的にどのような歯並びの場合に、言いづらさが起きるのか、また、改善方法はあるのかをご紹介します。
具体的な歯並びと滑舌の関係
歯並びと滑舌の関係は、下記の通りです。具体的な歯並びを例にどの程度、滑舌に影響があるのか、ご説明させて頂きます。
開咬(上下の前歯が開き、閉じない方)
開咬とは、奥歯で噛んだ状態でも、上下の前歯が閉じきらず、前歯の開きが強い噛み合わせのことです。
この場合は、前歯を使って発音する、さ行やざ行での発音に力が入りやすく、発音がしづらいため、勢いをつけて発音をすることで、唾液の音も混ざりやすい傾向にあります。
また、前から見ると、発音する時に、舌が見える時間が多いことも特徴です。
この場合は、下記の滑舌コラム「歯並びは滑舌に関係ない?」の通り、前歯の開きが強くても、鮮明な発音ができるようになります。舌の位置、「s」の発音の仕方を調整する方法で、改善が可能です。
受け口(反対咬合/はんたいこうごう)
受け口とは、下顎が上顎よりも出ている噛み合わせのことです。
受け口の方は、さ行がしゃしゅしぇしょと空気の音が多く入りやすいことや、発音の際に舌がよく見えることから、舌足らずのような話し方になることが多いのが特徴です。
この場合は、舌の位置、空気の量の調整をする方法で、改善が可能です。
また、下記の滑舌コラム「受け口は滑舌トレーニングで治るのか?」の通り、話す時だけ、受け口のような話し方になる場合がありますが、この場合は、受け口自体を滑舌トレーニングで治すことが可能です。
出っ歯(上顎前突/じょうがくぜんとつ)
出っ歯とは、上の前歯が他の歯よりも前方に出ている状態のことです。
多少の場合には、発音への影響はありませんが、上顎や前歯が極端に出ている場合には、ま行やば行など唇を使う言葉で、唇が閉じづらい、また、さ行やざ行も空気が多く入りやすいなどの傾向にあります。
この場合は、舌の位置、発音の仕方を治すことで改善が可能です。
過蓋咬合(かがいこうごう)
過蓋咬合とは、噛み合わせた時に、上の前歯が下の前歯を必要以上に覆っている状態のことで、奥歯で噛んだ時に、前から見ると下の歯が全く見えない状態のことです。
過蓋咬合の方は、発音時の噛み締めが強く、また、口腔内が狭くなるため、全体的な発音が「噛み締めた音」になりやすいことが特徴です。舌を動かす空間が狭いことで、モゴモゴとした話し方になることもあります。
この場合は、口腔内を広く使えるよう舌のトレーニングを行うことで、滑舌改善が十分可能です。
切端咬合(せったんこうごう)
切端咬合とは、噛み合わせた時に、上下の歯の先端が触れる状態のことです。
この場合は、さ行やざ行などの発音で上下の歯同士がぶつかることが多く、歯に負担が大きくかかります。また、開咬の方と同様に、発音時に力が入りやすいのも特徴です。
この場合は、舌の位置、発音時の強さをトレーニングすることで改善が可能です。
発音は舌の位置で決まる
上記のように、歯並びにより、影響を受けやすい言葉はありますが、「歯並びは滑舌に関係ない?」の通り、発音や滑舌は「舌の位置」で決まるため、歯並びが悪くても、滑舌を良くすることが可能です。
歯並びにより、滑舌が悪く感じる場合は、歯並びが影響し、ご自身では、発音の位置が調整できない場合に、発音のしづらさや音の不明瞭さが生じています。
発音は舌の位置で決まるのですから、発音の位置を整えることで、現状の歯並びの状態でも、十分、滑舌改善は可能なのです。